飛散

文と写真:碇本学

長い夢の中を泳いでいた
時折シャチやクジラやイルカと一緒に遊んだ
水中から見えた太陽は
ゆらゆらと揺れていた
水面に近づくほどに青は薄く透明に
潜っていけばどんどんと濃く
青から紺へ
緑から黒に
色彩はグラデーションしている
夢の中では七色の虹の鱗を持つ
不思議な生物と一緒にいた
勢いよく泳ぐたびに海の中に
七色が舞った
太陽の光がプリズムして
水中のミラーボールが回転するよう
あっ もうすぐ意識が途切れると
本能的に悟ってしまう
この夢の世界の終わりの終わりがくる
不思議な生き物はわたしを頭に乗せて
一気に跳ね上がる
水中から空中へ七色を飛び散らせて
ねえ 全速力で舞ってほしいと願う
わたしの鰓呼吸が終わって肺呼吸に接続される
口から飲み込んでいた水がボワっと
空気に触れてしまったその生き物は
細胞が燃えるように七色の塵になって
飛散していく
ベンチで目が覚めると緑道沿いで揺れている
花に呼ばれていて
長い夢の中で泳いでいた恐竜のような生き物は
植物に進化していた
空中で飛び散った色彩は
花となって咲いて
ゆらゆらと揺れていた