線、線、線の

文と写真:碇本学

いくつもの線が平行に
垂直に
時には    交わりながら
伸びていて僕らはどうやらその線の上にいるらしい
いくつもの時間が同時にあって
同時にはない
すべての可能性があるのに僕らはどうやらこの線の上にいる
ひょいと隣の線に飛び乗れたら
変わってしまうね
僕らの距離も
関わりも
隣にいるのは僕ではなく
君でもない

あらゆる可能性が同時に存在していたら狂ってしまいそうだ
だって 何も選べないだろう
選ぶことは選ばないことだから
と悲しい気持ちになった僕の手をギュッと握る
君の体温がこの線の正しさを示しているようで
あたたかい気持ちに包まれる
どこにもいけないのではなくて
ここを選んだことの意味を
僕にとっての希望が誰かにとっての絶望によって
与えられているのかもしれない
だけども その誰かのことを思って
不幸にはなれないんだ
君が隣にいる時間軸と
君が隣にいない時間軸があって
ありとあらゆる優しさと哀しさが入り混じって
何かを選んだわけではないのに
選ばされているような
錯覚
選んだと思いたい自覚だけ意識する
いくつもの線が平行に
垂直に
交わっている場所を
まるでサーカスのように
泣き虫な僕はやっぱりピエロのメイクをして
手を握ったまま
君と一緒にいろんな時間軸を曲芸して飛び回るんだ