『RECORD JUNKIE ANIMALS』 There is nothing more to say (RJA-005)

文と絵:山田タクヒロ

「もう、ここにきて何日目になるかな。
島にはオレンジの実がなるし、魚も捕れるから食べ物は大丈夫。
そして、何よりレコードが聴けるっていうのがありがたい。
カバンの中に入ってたのはこの1枚だけだけど、
内容的にも無人島にぴったり。よかった!
その名もThe Islandなんて曲もあるしね。
しかしなんたって、、来た、この曲!
く~~、やっぱり泣けるメロディだ。
…あ、終わっちゃった。。さ、もう一回聴こう~っと♫」

『(おーい、船行っちゃうけど、いいんですか~)』

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BEGIN/MILLENNIUM(1968)

もし無人島に1枚だけレコードを持って行くなら、
何を持って行く?という、普通の人にはどーでもいい質問が
レコードマニアは大好き。
(ついでにいうと、はじめて買ったレコード(ハジレコ)の話も好き!)

そんな「無人島レコード」を選ぶのは音楽好きにとって
楽しいことかと思いきや、1枚だけ選ぶという残酷な設定に、
悩み、泣き、しまいには選ぶことを放棄する人もいるという。
(嘘…でもないかも。)
たまに無人島に電気ないじゃん!というつっこみが入りますが、
そこはスルーでお願いしたく。

そして、かくいう私の1枚はというと、、、
カートベッチャー率いる、ミレニウムの「ビギン 」。
1968年、大手レコード会社からリリースされたにも関わらず、
プロモーション不足でほとんど売れなかったという無名のアルバム。
しかしその後の再評価によってじわじわと音楽好きに浸透し、
今や名盤の称号を不動のものにしたアルバム。
これが私にとって、永久欠番の1枚なのです。

このアルバムの魅力、何から語ろうかな。

まずはなんといっても楽曲の構造。ミルフィーユのように何層にも重なり、
アイデアもいっぱい詰まっていて、聴く度に新しい発見がある。

そしてシルクのように柔らかく、抜けのいい天上の調べのようなコーラスが
全編を包み込みながら、ダイナミックな音圧も楽しめる、という、
ソフトロックファン以外にもアピール出来るポテンシャル。
(ドラムの音なんか、ドゥーン!ブシュー!って潰れててかっこいい。)

そしてジャケットもいい!
白黒のシンプルな木版画、グリッドで分割された構成もナイス!
飽きたら塗り絵にも出来る、って誰が言ってたんだっけな。。

ジミヘンやジャニスなどが、その生き方も含めて60年代のロックの代名詞と
されているけど、このアルバムのリーダーのカート・ベッチャーも、
革新的で魅力的なサウンドを作ったという意味でロックだなー、と思う。
かのビーチボーイズのブライアンウィルソンも、カート達のスタジオから
漏れて来たサウンドに、思わず興味津々で覗いて来たとか。

ああ、私もその場にタイムトリップしたい!!

当時作られたオリジナル盤を、渋谷の裏通りのレコード屋で
偶然発見したときの興奮は忘れられない。
帰ってさっそく聴いてみると、「Some sunny day」という曲で、
すでに愛聴していた再発CDにはない1フレーズを発見……。
そんなことってあるんだ!とびっくりした記憶があります。

…う~ん、なかなか語りつくせない。。