クッキーとビスケット

文:重藤貴志[Signature]

クッキーなのか、ビスケットなのか。 それが問題だ。

世の中には、本当に漠然としか理解していない事柄が多い。
たとえば「クッキー」と「ビスケット」の違いを説明できるだろうか。

「クッキー」は、アメリカから伝わってきた焼き菓子の名称とされており、
全国ビスケット協会の規約では「糖分と脂肪分が全体の40パーセント以上」
という基準を満たしていなければ「クッキー」として販売できないそうだ。

対して「ビスケット」は、イギリスから伝わってきた焼き菓子の名称であり、
全国ビスケット協会の規約では「糖分と脂肪分が全体の40パーセント未満」
のものを「クッキー」と区別して「ビスケット」と呼んでいるらしい。

面白いことに、アメリカ人にとっては「クッキー」という焼き菓子しか存在せず、
イギリス人にとっては「ビスケット」という焼き菓子しか存在しないのだとか。
それはそれで幸せなことかもしれないが、ちょっと物足りないかもしれない。

見方を変えてみれば、日本人には「焼き菓子の呼び方で戸惑う」という特権がある。
何にせよ、選択肢があるのは、豊かさの証明だとはいえないだろうか。

そこで、冒頭の問いをもう一度。

クッキーなのか、ビスケットなのか。 それが問題か?