さよならのバイバイ

文と音楽:田辺マモル

「式」と名のつく行事がとにかく苦手で、結婚式に呼ばれても、申し訳ないと心から思うけれど行かない。不義理はしたくないのでお葬式にはがんばって行くのだけど、なるべく式を避け、お通夜でお別れをする。

この頃は新歓コンパのシーズンで、夜の街角でスーツ姿の若い人たちがフレッシュな笑顔で楽しそうに集っているのを見ると、ああ自分も生涯に一度ぐらいは会社員を経験しておけばよかったなあとうらやましい気持ちになるのだけれど、テレビのワイドショーなんかで入社式の様子を映しているのを見ると、やっぱり会社に入らなくてよかったと思う。会社勤めが嫌だとか、会社員を下に見ているわけではない。「式」が苦手なだけだ。人として当たり前のことができない自分がうらめしい。劣っているのは僕だ。素直でまっとうな人間に生まれたかった。パリピーになりたかった。

子どもの世界はとにかく「式」と名のつくものが多い。入学式、卒業式、始業式、終業式などなど。もうそれは済んだことと安心しきっていたのだけど、自分に子どもができると、恐ろしいことにまたそれらが我が身に降りかかるのである。子どもができたときにはそこまで考えていなかった。浅はかだった。しかも自分が子どもだった頃よりも今のほうがずっと、親参加、親同伴の行事が多いように思う。娘は今年で10歳になるのだけど、2分の1成人式ってなんだ!これ以上「式」を増やすな。

ついでに言うと「会」と名のつくものも嫌いだ。幼稚園の頃のクリスマス会とかお誕生会、あれはママ友たちの災いの元である。運動会とか音楽会とかも子どもだけでやってくれればいい。懇談会も、毎学期に2回ずつなんて多すぎる。先生方だって大変である。ただでさえ激務の、教師の負担を軽減するためにも無駄な「式」や「会」はなるべく廃止すべきだ。なんで僕は熱くなってるんだろう。PTA総会とか謝恩会とか、字を見るだけでも恐ろしい。町内会にもなるべく関わりたくない。おやじの会って何なんだ。ああ、そういうものに自ら参加したがるような、まっとうな大人になりたかった。

で、ようやく本題なのだけど、そういうわけで僕は恋愛におけるお別れ会も苦手です。卒業式も苦手です。はっきりと別れを告げるぐらいならば、だらだらと関係を続けるか自然消滅を選びたい!と、男らしくないことを男らしく言い切ってみたけど、それは言い過ぎかもしれない。そこはやはり、あえてさよならを言わずとも、別れの気配を察するのが大人の恋というものなのではないでしょうか。ほんとかな?

 

 

さよならのバイバイ

駅前で流れ星を見た
それは一瞬の出来事で
願い事を唱える時間など
まったくなかった

忙しさを理由にして
会う回数は減って行った
心変わりを知りながら
何にもできなかった

嫌いじゃないから好きなんて間違ってる
嫌いじゃないから好きなんて嘘

いつものようにわかれぎわに手を振った
力なく手を振った
それはさよならのバイバイ

寝不足を理由にして
さっきからあくびしている
友だちから始まったふたり
本物にはなれなかった

君より他に好きな子なんていないけど
君には他にいるのかもと思う

いつものように
じゃあまたねと僕の手を
握ってくれたけど
それはさよならのバイバイ

 

Byebye