往復書歌

文:庄野雄治 題字:河村杏奈

 

街は今日も雨さ/sion

今日は昨日の繰り返しで、明日は今日の繰り返し

どいつもこいつも才能に溢れてやがる
住んでた町では王様だったのに
どこに行っても媚び諂った笑い顔だけが上手くなる
なんだ、もしかしてオレって駄目なのか?

若さなんて棒に振るもの、誰かが歌ってた
都会に行けば自分の事を解ってくれる人がいるって思っていた
誰も知らないと思ってた音楽はみんな知っていて
誰も知らないと思っていた本は誰もが10代に読んでいた

何がきままな都会の暮らしだ

指紋が擦り切れるほど皿洗いを続ける気力もなく
現実を見る度胸もない
何やってんだろう?って自問自答する余裕もなく
縋るように、お袋に電話をする

生きてなさい

ただそれだけ言った彼女の言葉がオレを支える
何にもないオレを支える
指紋が擦り切れるほど皿を洗ってやろう
そして残飯を食らってでも生きてやる

今日は昨日の繰り返しで、明日は今日の繰り返し
ってことは明日は今日なんだ
今日が楽しけりゃ明日は楽しい
今日が楽しけりゃオレの今までは楽しかったんだ

そう、だからまずは食う事だ