2019年2月 1日 (金)

何も言わなくても

文:重藤貴志[Signature]

言葉を交わさなくても、言いたいことが伝われば――。
誰にでも、年に何度かはそう思う瞬間があるのではないか。

人が言葉を手に入れる前、遥かな昔はどうしていたのだろう。
視線や唸り声、身振り手振りで意志の疎通はできていたのか。
そんなことを考えていると、夜も眠れなくなってしまう。

吹き荒れる北風の強さや訪れる冬の寒さに不安を覚えたり、
乾いた薪の爆ぜる音や肉が焼ける匂いに喜びを感じるのは、
数万年という長い時間を隔てていても変わらないと思う。

言葉が生まれ、形のないものに名前がつけられてから、
急速に世界は認識されるようになり、狭くなっていった。

それでも、言葉は物事の本質を網羅できるわけではない。
文字どおり、網の目から細かい粒子がこぼれ落ちていく。
もしかすると、それこそが本当に大切なものかもしれない。

同じ景色を見ていても、一人ひとりの感じ方は異なる。
「綺麗だね」と頷き合っても、僕と君の見え方は違う。
そんな当たり前のことを、ときどき忘れてしまう。

言葉を交わさなくても、言いたいことが伝われば――。
一方で、何も言わなくてもわかる場合もあると信じたい。

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2018年12月 7日 (金)

時、留まらず

文:重藤貴志[Signature]

年の瀬が迫るにつれ、何かと気忙しくなってくる。
ラジオからはクリスマス・ソングが流れはじめ、
ケーキの予約を急かすコマーシャルが焦りを助長する。

一年が過ぎるのは、どうしてこんなに早いのだろう。
ふと気がつけば、いつの間にか季節は巡っている。

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2018年11月 9日 (金)

手が失ったもの

文:重藤貴志[Signature]

ずっとPCのキーボードを叩いていると、
手が大きな溜め息をついたような気がする。

特に痛みを感じるわけではないけれど、
無言で「ほかのことをさせてくれ」と訴えてくる。

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2018年11月 3日 (土)

惑わされて

文と写真:碇本学

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2018年9月15日 (土)

土までの距離を思う

文:重藤貴志[Signature]

普段よりも長い距離を歩くと、翌日には足の裏が痛くなる。
最大の原因は、不摂生と運動不足であることは間違いない。
だが、踏みしめる地面の硬さも大きく影響しているだろう。

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2018年9月 7日 (金)

アンドゥトロワ

文と写真:碇本学

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2018年8月31日 (金)

厨房へ入り浸る

文:重藤貴志[Signature]

下手の横好きだが、自分で料理をするのは苦にならない。
ベースになっているのは、何と言っても母のつくる食事である。

「家事は嫌い、料理は面倒」と笑いながら公言する母だが、
いつもその手際は魔法のようで、食卓には多くの皿が並ぶ。

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2018年8月 3日 (金)

白いライン

文と写真:碇本学

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2018年7月28日 (土)

焚き火の持つ効能

文:重藤貴志[Signature]

少なくとも約50万年前頃から人類は火を焚いていたといわれている。
しかし、機械化が進むうち、私たちは急速に焚き火から遠ざかった。

スイッチ一つで簡単に点火できるクッキングヒーターは便利だが、
火に対する距離感は曖昧になり、適切に制御できる人は減少した。

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2018年7月20日 (金)

料理歳時記

文:曽根雅典[三軒茶屋nicolas] 絵:佐々木裕



 小さい頃、実家の駐車場の裏に杏の木が植わっていました。夏になって杏が実をつけると、夜寝ているときに、杏が駐車場のトタンの屋根の上に落ちる音がして、屋根を転がり地面に落ちる音がしました。その杏を、祖父が茣蓙の上に半割にして並べて干していました。わたしは、干されている杏の蒸れた甘いにおいが苦手で、いつも遠巻きに眺めていました。30年以上前の話です。

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