アンドゥトロワ

文と写真:碇本学

片方の翼だけ残された
路上のサイクル
あの日僕らのうえに堕ちてきた不安
中性脂肪がにじみ出すような
財務整理が追いつかない
アンドゥトロワ

風が強い日の
灰色の空
塵がふきとばされて
視界がクリーンに
透き通って小さな虹が跳ねる
煽られて
折れるビニール傘

フィルターから
一滴一滴
カップに落ちていく
コーヒーの香り
側面がさびついたトラック
運転手は眠りこけてる
サイドブレーキはしっかり引いているかい

黒い服の集団が通りすぎて
雨粒が一気に落ちてくる
灰色空に穴が開いたような青空
狐の嫁入りみたいなダンス
風と水と土とあとなにかの
円環みたいな
アンドゥトロワ

きみの前髪を揺らす
目をつむると輪郭だけになる
葉っぱから
一滴一滴
地球に落ちていく
水の匂い
アンドゥトロワ