少しだけ、酔うために

文:重藤貴志[Signature]

決して強いわけではない。
だが「酒を飲む」という行為が好きだ。

煙草や珈琲と同じように、少し無理して飲んでいた頃もあった。
年齢を重ねるごとに、自然と楽しめるようになってきた気がする。

家で飲むときは、真っ先に日本酒へ手が伸びる。
次に多いのはウィスキー、買い置きがあればワインも悪くない。

いわゆる晩酌として飲む場合がほとんどだが、
深夜に仕事を終えてから簡単な酒肴を整え、
疲れを癒やすように盃を傾ける場合もある。

嫌なことや悲しいことに遭ったときには飲まない。
良かれ悪しかれ、酒は自分の感情が増幅される。
さらに辛く、やりきれない気持ちになるからだ。

楽しくなるのは、ほんの一瞬だけ。
いつも、ぞっとするような寂しさと背中合わせ。
決して浮世の憂さを忘れることはできない。
でも、それでいいと思っている。