波紋

文と写真:碇本学

誰かの悪意に感づいてしまった
平坦なツラをしてるのに
かすかに溢れ出すそれを
すくい取って僕の中で転がす
とても簡単に潰せそうなそれを
愛おしくも思えるほどに
冬がもうすぐ終わる予感
水面が揺れて
波紋が広がる
いくつも
同時多発的に
広がって消えていく
波紋が向こうでも
ああ、それを感じている自分の
中で似たようなものがそれと
くっつくように思えて
どこかで安らいでいる
世界中至る場所で起こる
同時多発的に
波紋がいくつも
僕のそれも誰かがすくい取って
しまうから
なんでもないフリしている
平気な波紋
転がしたものは呼吸とともに
吐き出されて
白い息となって消える
消えて
息を吸う